「型枠大工 給料」で検索すると、平均年収476万円と書いてある記事もあれば、SNSでは「対価が低すぎる」と嘆く現役職人の投稿も見つかります。
正直、どっちを信じればいいのか分からなくなりますよね。

私は型枠大工として現場に立って25年になります。
この記事では、私が実際に見てきた経験年数別の日給相場から、なぜネット上の数字と現場の実感がズレるのかという構造まで、包み隠さず説明していきます。
そもそも型枠大工がどんな仕事なのか知りたい方は、先にこちらの記事を読んでもらうと理解が深まります。
型枠大工の給料、結局いくらなの?

Yahoo!知恵袋で「型枠大工さんの給料って建築業界の中で安い方なんですか?」という質問があります。
ベストアンサーは国土交通省の設計労務単価データをもとに、東京都の型枠工の日当を26,000円、実働23日で月収約59.8万円、年収換算で約717.6万円になると回答しています。他業種と比べて特に安いということはない、という結論です。
一方で、Xで現役の型枠大工を検索すると、まったく違う声が出てきます。
「本当に技術、労働に対する対価が低すぎるって事が知られていない!って以前の問題だよね」
(現役型枠大工のX投稿より要約)

え、どっちが本当なんですか!?年収717万円なら結構すごいのに…
どっちも嘘じゃない。ただ、前提にしている条件が違うんだ。それを順番に説明していくぞ

この記事では、まず私が現場で見てきた経験年数別のリアルな相場を示したうえで、なぜこの2つの数字がズレるのかを構造から説明していきます。
型枠大工の給料はいくら?経験年数別のリアルな相場

まずは、私が25年の現場経験を通じて見てきた、経験年数別の日給相場をお伝えします。
地域や会社によって差はありますが、あくまで目安として参考にしてください。
- 未経験1年目の日給相場
- 3年目・5年目の日給相場
- 職長クラス・一人親方の日給相場
それでは、1つずつ見ていきましょう。
未経験1年目の日給相場
未経験1年目の日給は、10,000円〜12,000円が目安です。
ここで意外と知られていないのが、年齢によってスタート地点が変わるという点です。
16歳前後の未経験なら日給10,000円あたりから始まることが多く、25歳前後で未経験から入る場合は日給12,000円あたりからスタートすることが多いです。
同じ「未経験1年目」でも、年齢が上がるほど初任給も高くなる。これは体力・理解力・社会人経験を会社側が加味しているからだと、私は感じています。
3年目・5年目の日給相場
3年目になると、日給は12,000円〜が目安になります。
5年目になると、15,000円〜まで上がってくる人が多いです。
ここも1年目と同じで、年齢によって差があります。
ただ、はっきり言えるのは、3年、5年と現場に出続けていれば、日給は着実に上がっていくということです。伸び方は人によって差がありますが、それは後半で詳しく説明します。
職長クラス・一人親方の日給相場
職長クラス、一人親方クラスになると、日給は20,000円程度が目安になります。
これを月の稼働日数(後述しますが目安22日)で単純計算すると、月収44万円前後になります。
ただし一人親方の場合は、ここから工具代や車両維持費、保険料などの経費を自分で負担する必要があるので、そのまま手取りになるわけではない点は正直にお伝えしておきます。

職長クラスまで行けば、月40万円台まで見えてくるんですね
そうだな。ただしそこに行き着くまでに、何年か下積みがあるのを忘れるなよ

型枠大工はなぜ日給制?稼働日数のリアルと月収の目安

型枠大工に限らず、多くの建設職人の給料は日給制が基本です。
月給制のサラリーマンと違い、「働いた日の分だけ支払われる」という仕組みです。
これが、型枠大工の収入を語るうえで欠かせないポイントです。
雨が降れば現場は止まり、その日は仕事になりません。台風が来れば数日単位で現場が動かないこともあります。つまり月給制と違って、天候によって月収そのものが変動する構造なんです。
私の感覚では、雨で飛ぶ分も含めて、月の稼働日数はだいたい22日前後です。
「日給×稼働日数」という掛け算で、月収がほぼ決まる。これが型枠大工の給料の基本構造です。
先ほどの経験年数別の日給を、22日で単純計算してみると、こうなります。
| 経験年数 | 日給の目安 | 月収の目安(22日換算) |
|---|---|---|
| 未経験1年目 | 10,000円〜12,000円 | 約22万円〜26万円 |
| 3年目 | 12,000円〜 | 約26万円〜 |
| 5年目 | 15,000円〜 | 約33万円〜 |
| 職長・一人親方 | 20,000円前後 | 約44万円前後 |
あくまで日給ベースの単純計算なので、実際の月収は現場の状況や天候によって前後します。この振れ幅を受け入れられるかどうかも、この仕事を続けるうえでの現実的なポイントです。
なぜ「型枠大工の給料は低い」と言われるのか

ここからが、この記事で一番伝えたいところです。
冒頭で紹介した「年収717万円換算」というデータと、「対価が低すぎる」という現場の声。この2つがなぜ両方とも本当なのか、構造から説明します。
まず、Xでこんな投稿を見つけました。
「型枠業の問題は、仕事、技術、難易度や技術取得までの下積み期間等が一般に知られていないって事なんだよな。まず、型枠大工って何??って言われたりするもんな」
(現役型枠大工のX投稿より要約)

そもそも型枠大工がどんな仕事か知らない人が多いってことですよね…知らないと安く見られちゃうんですか?
それだけじゃない。もっと直接的な理由がある。「設計労務単価」って言葉、聞いたことあるか?

設計労務単価とは、国が公共工事の予算を計算するために毎年発表している、職種ごとの1日あたりの労務費の基準です。
知恵袋の回答にあった「日当26,000円」も、この設計労務単価がもとになっています。
ところが、Xで現役の型枠大工がこう指摘しています。
「上がるのは『設計労務単価』であって、型枠大工本人の賃金が上がるわけではない。上がっても歩掛の積算が違いすぎて、歩掛が倍になれば単価は実質半分になる」
(現役型枠大工のX投稿より要約)
「歩掛(ぶがかり)」というのは、ある作業量に対してどのくらいの人数・日数がかかるかという、積算上の基準のことです。
ここが実際の現場の感覚と合っていないと、国が発表する単価が上がっても、現場の職人1人あたりの取り分は増えないことがある。これが、公的データと現場の実感がズレる大きな理由の1つです。
さらに、建設業界特有の重層下請け構造も関係しています。
大手ゼネコンから元請け、下請け、孫請けと仕事が下りてくる中で、それぞれの段階で中間マージンが発生します。末端の職人まで届く頃には、当初の予算より目減りしていることが少なくありません。
加えて、地域による供給過多も単価が上がりにくい一因です。Xでこんな声もありました。
「地方ですが多分型枠大工は多すぎるのだと思います。今の半数ぐらいになれば…やっと食える程度には単価上がるかもしれません」
(地方在住の現役型枠大工のX投稿より要約)
正直、この気持ちはよく分かります。私の周りでも、単価交渉がしづらい地域とやりやすい地域があるのは事実です。
建設業界の匿名掲示板を見ても、同じような不満が繰り返し書き込まれています。
「日当安すぎ」という投稿が目立ち、ある地域の常用日当18,000円という条件について「その水準でやるのはきつい」といった趣旨の批判的な声も見られました。この水準だと、年収500万円に届かない計算になるという指摘もありました。
つまり、「平均年収は高め」というデータと「対価が低い」という現場の声は、どちらも本当です。前者は制度上の基準値、後者はそれが現場までどう届くかという実感の話。この2つを混同しないことが、給料の実態を正しく理解する第一歩になります。
給料が上がる人・上がらない人の違い

ここまで、構造的に給料が上がりにくい理由を説明してきました。
建設業界の掲示板では、「型枠大工は一人前になるのに最も長い歳月がかかる職種なのに、賃金は最も安い部類に入る」という矛盾を指摘する声もよく見かけます。
技術習得の長さに対して報酬が見合っていないと感じるのは、正直、私も同感です。
ただ、同じ構造の中にいても、日給がどんどん上がっていく人と、何年経っても変わらない人がいるのも事実です。
私は25年間、数えきれないほどの若手を見てきました。
その経験から言うと、給料が伸びる若手に共通しているのは、実は技術力より先に3つの要素です。
- コミュニケーション能力が高いこと
- ずるさがないこと(人が見ていないところでも手を抜かない)
- 日々真面目に取り組む姿勢があること
技術は、現場に出ていれば嫌でも身についていきます。
でも、この3つが欠けている人は、いくら手が早くても単価が上がりにくい。逆にこの3つが揃っている若手は、多少覚えが遅くても周りが自然と面倒を見て、結果的に早く一人前になっていきます。

技術より先にコミュニケーションか。たしかに、伸びる若手を見ているとそう感じます
そうだな。現場は1人じゃ回らない。誰かに教えてもらえるかどうかで、伸びるスピードは全然違ってくるんだ

Xでも、業界の将来を考えて独立支援や養成所の構想を語る現役の親方の投稿を見かけました。
「型枠大工の養成所や独立支援をやってみたい。手に職をつければそこそこの稼ぎになるので、若い子の助けになるはず」
(「型枠大工の親方」を名乗るアカウントのX投稿より要約)
業界全体が「稼げる仕事にしていこう」と動いている面もある。だからこそ、今この仕事を選ぶ人には、技術だけでなく人としての伸びしろも意識してほしいというのが、私の本音です。
型枠大工と他の職種・他業種との給料比較

Web上のデータでは、型枠大工の平均年収は約476万円、給与幅は299万円〜676万円というデータもあります(求人ボックス調べ)。
また別の調査では、平均給料は月30万円前後、初任給16万円〜、年代別では20代22万円、30代25万円、40代32万円というデータもあります。
数字にばらつきがあるのは、調査対象や集計方法(会社員なのか一人親方なのか、地域はどこかなど)が違うためです。
私が示した日給ベースの数字と、これらの年収データを単純に比較することはできませんが、大まかな傾向として言えるのは、日本の給与所得者の平均年収(国税庁調べで460万円前後で推移)と比べて、型枠大工は決して低い部類ではないということです。
ただし、鳶職や鉄筋工など、他の建設職種と比べても大きく突出して高いわけでもありません。総じて「体力と技術に見合った、平均的〜やや高めの水準」というのが実態に近いと、私は感じています。
【関連記事カード:「型枠大工と鳶職・鉄筋工の仕事内容・給料の違い」】
型枠大工の給料を上げるための具体的な選択肢

ここまでの話を踏まえて、実際に給料を上げたいと思ったとき、どんな選択肢があるのかを紹介します。
- 資格を取る
- 手間請けに切り替える
- 独立して一人親方になる
- 会社(勤務先)を変える
それでは、1つずつ見ていきましょう。
資格を取る
型枠大工には「型枠技能士」という国家資格があります。
資格があるからといって、それだけで日給が跳ね上がるわけではありませんが、会社によっては資格手当がつくこともありますし、何より「一定水準の技術がある」ことの証明になり、任される仕事の幅が広がります。
手間請けに切り替える
「手間請け」とは、日給ではなく、作業量(㎡や㎥など)に応じて報酬が決まる働き方です。
スピードと技術に自信がある人ほど、日給制より稼げる可能性があります。ただし、天候や体調で仕事が進まなかった日のリスクも自分で負うことになるので、良し悪しは人によります。
独立して一人親方になる
一人親方になれば、自分で仕事の単価を決められるようになります。
年収1,000万円を超える人もいますが、それには相応の技術と、仕事を取ってくる営業力・信頼関係が前提になります。経理や保険の手続きなど、職人以外の業務も自分でこなす必要があります。
会社(勤務先)を変える
同じ経験年数、同じ技術力でも、会社によって日給の設定は違います。
今の会社が業界の相場より低い単価で職人を使っている場合、転職によって日給が上がるケースも珍しくありません。「今の給料が適正か分からない」という人は、一度、他社の求人条件を確認してみる価値があります。
【関連記事カード:「型枠大工が未経験から始める方法・必要な資格まとめ」】
もし転職を考えているなら、似鳥型枠で働いてみませんか?
私が働いているのは、東京都足立区にある株式会社似鳥型枠です。
「今の会社の日給は業界の相場と比べてどうなのか」「未経験からでも本当にやっていけるのか」。文章だけでは判断がつかない部分は、直接聞いてもらうのが一番早いです。
型枠大工の給料に関するよくある質問
未経験1年目の日給は10,000円〜12,000円が目安で、他の職種と比べて特別高いわけではありません。ただし、日給制なので体を動かした分がそのまま収入になり、経験年数とともに着実に上がっていく仕組みです。
データによって差はありますが、日本の給与所得者の平均年収と比べて大きく低いわけではありません。ただし他の建設職種と比べて突出して高いわけでもなく、平均的〜やや高めの水準というのが実態に近い印象です。
給料の決まり方(日給×経験年数×本人の姿勢)に性別による違いはありません。体力面でのハードルはありますが、コミュニケーション能力や真面目さが評価される仕事なので、続けている女性の型枠大工も実際にいます。
建設業の担い手不足を背景に、設計労務単価は年々見直されている傾向にあります。ただしそれがそのまま職人本人の賃金に反映されるかは会社や現場の構造次第なので、資格取得や独立など、自分から動く選択肢も知っておくことが大切です。
まとめ
型枠大工の給料は、入って数年は決して高くありません。
ただし日給が経験と本人の姿勢に直結する仕事なので、覚える気があり、周りとコミュニケーションを取れる人であれば、数年で状況は大きく変わっていきます。
ネット上で見かける「平均年収は高め」というデータと、「対価が低い」という現場の声。どちらも本当のことであり、その差を生んでいるのは制度の構造と、あなた自身の伸びしろです。

いいか、給料の話は数字だけ見て終わりじゃない。自分がどう伸びていきたいかまで考えて、判断してくれ
この記事が、あなたが自分に合った選択をするための判断材料になれば幸いです。

